難民支援活動で直面する燃え尽き症候群:予防と回復に向けた私の実践と学び
難民支援の現場では、日々様々な困難に直面します。言葉の壁や文化の違い、支援を求める方々の抱える重い背景など、ボランティア自身の心身に大きな負担がかかることも少なくありません。こうした状況下で、私自身も「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の兆候を感じ、活動の継続に苦悩した経験があります。今回は、その経験と、どのようにして予防・回復に取り組んだのか、そこから得られた学びについてお話しいたします。
燃え尽き症候群の兆候と直面した困難
活動を始めた当初は、難民の方々の力になりたいという一心で、時間や労力を惜しまず活動に没頭していました。しかし、数ヶ月が経過した頃から、少しずつ心身の変化を感じ始めました。
例えば、毎週のように開催される学習支援の準備に以前ほどの情熱を感じられなくなったり、支援対象者の方から感謝の言葉をいただいても、心から喜べない自分がいたりしました。また、活動がない日でも、常に難民支援に関するニュースや情報に触れては、「もっと何かできることがあるのではないか」と自責の念に駆られることが増えました。睡眠の質が低下し、慢性的な疲労感に襲われるようになり、集中力も続かなくなっていったのです。
ある時、支援を必要としている家族から緊急の連絡が入ったのですが、すぐに対応できない状況であったにもかかわらず、そのことに強い罪悪感を覚え、数日間気分が落ち込むことがありました。この経験をきっかけに、自分の心身の状態が危険なサインを発しているのではないかと真剣に考えるようになりました。
予防と回復に向けた具体的な実践
燃え尽き症候群の兆候に気づいてからは、活動を一時的に縮小し、自己ケアと向き合う期間を設けました。その中で実践したことをいくつかご紹介します。
1. 完璧主義を手放し、適度な休息を取る
「全てを完璧にこなさなければならない」という思い込みが、私を追い詰めていた一因であることに気づきました。難民支援は長期にわたる活動であり、一人で全てを背負うことはできません。週に一度は活動から完全に離れ、好きな趣味に時間を費やす、自然の中で過ごすなど、意識的に心身を休ませる時間を作りました。最初は罪悪感がありましたが、結果的にリフレッシュすることで、活動への新たなエネルギーが湧いてくることを実感しました。
2. 同僚ボランティアや専門家との対話
自分の抱える不安や疲労感をオープンに話すことも重要でした。同じチームのボランティア仲間も、多かれ少なかれ同様の感情を抱えていることが分かり、悩みを共有する中で「一人ではない」という安心感を得られました。また、必要に応じて、ボランティア団体のカウンセリングサービスを利用し、専門家の視点から客観的なアドバイスを受けることで、心理的な負担を軽減することができました。
3. 小さな成功と変化に目を向ける
難民支援活動は、すぐに目に見える大きな成果が得られないことも少なくありません。しかし、小さな変化や成功体験に意識的に目を向けることで、モチベーションを維持することができました。例えば、学習支援で関わった方がひらがなを読めるようになった瞬間や、就労支援でサポートした方が面接に合格したといった、ささやかな喜びを仲間と分かち合うことで、活動の意義を再確認できました。
4. 自身の限界を認識し、適切な線引きをする
無理な依頼は断る勇気も必要です。当初は、どんな依頼でも「NO」と言えず、結果的にキャパシティを超えてしまうことがありました。自身の活動時間や能力には限界があることを認識し、引き受けられない場合は正直に伝え、他のボランティアに協力を仰ぐなど、チームとして機能することの重要性を学びました。これは、自分自身を守り、持続的に活動を続ける上で不可欠なスキルであると痛感しています。
活動を続ける上でのモチベーション維持のヒント
燃え尽き症候群を経験し、回復に取り組む中で、活動を長く続けるためのいくつかのヒントを得ました。
- 定期的な振り返り: なぜこの活動を始めたのか、初期の情熱や目指したものを定期的に振り返る時間を持つことが大切です。初心を思い出すことで、活動の原動力となります。
- 仲間との連携と共感: ボランティア同士で定期的に意見交換や情報共有を行い、互いの悩みに耳を傾け、共感し合うことで、精神的な孤立を防ぐことができます。
- 自己肯定感を育む: 大変な状況下で活動を続けている自分を労い、肯定する視点を持つことも重要です。完璧でなくとも、できる範囲で貢献している自分を認めることが、心の健康につながります。
まとめ
難民支援ボランティア活動は、やりがいが大きい反面、心身への負担も決して軽視できないものです。私自身の燃え尽き症候群の経験を通じて、ボランティア自身のセルフケアがいかに重要であるかを痛感いたしました。活動を長く継続していくためには、自身の心身の声に耳を傾け、適切な休息を取り、時には周りの助けを借りることが不可欠です。この記事が、同じように活動に尽力されている方々にとって、少しでも心の支えや具体的なヒントとなれば幸いです。